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【パッカー海未の恋愛放浪記】忘れ物から始まる恋@ペルー

  • 2015年02月17日  空山 海未  



    毎日のように安宿を渡り歩いていれば、ついついしてしまう忘れ物。でも、それはもしかして単なる不注意ではなく、そこに何かの「心残り」があったからだったのかもしれません。また来たい場所なのか、また会いたい人がいるからなのか。

     

    ●出会いはジョージアの日本人宿で

    世界中に数多く存在している、日本人の集まる宿。日本人宿と呼ばれるその場所には、毎日いろんな場所から世界を旅する日本人がやってきます。別の宿から移動してきたその人は最初、ほとんど口を開かない無口で寡黙な人でした。第一印象は「うわ、仲良くなれなさそう。」その宿では毎晩のようにリビングに旅人が集まり、美味しいグルジアワインを片手に旅の話で盛り上がります。ようすけと名乗ったその人は、最初こそみんなの話を黙って聞いていたものの、数日も経つとすこしずつ周りに馴染んで、自分の話をするようになっていました。それでもほとんどようすけさんについてわたしは何も知らないまま、その居心地の良い日本人宿を離れて西へと向かったバスの中で、自分がその宿に妹から借りたマフラーを忘れたことに気が付きました。

    まだその日本人宿に残っていた人に連絡を取ると、どうやらようすけさんだけがこのあとわたしと同じように西へ向かうとのことだったので、お言葉に甘えてそのマフラーを届けてもらうことになりました。お互いに二人ではほとんど会話もなかったので、申し訳ないなあという気持ちのほうが大きく、何かお礼をしなきゃと考えていました。一週間後に、ようすけさんがわたしのいる国に追いついたとの連絡をもらって、どうやって会おうかなんて考えつつ歩いていたら、反対側から歩いてきた見覚えのある顔。本当に驚いたのですが、待ち合わせもなにもしていないのに偶然道端でばったりと遭遇。無事にマフラーを受け取り、ろくにお礼も言えないまま、お互いその後列車やバスの時間が迫っていたのであたふたとお別れ。そのときはまだ、マフラーが自分のところに無事に返ってきたことでただ安心しただけでした。

     

    ●二度目の忘れ物

    コーカサスを抜けてヨーロッパに入り、今度はフランスにあるパリの日本人宿に滞在しました。ある日、パリで遊んで宿に戻ると、そこにいたのはようすけさんでした。お互いまさかまた会うだなんて思っていなかったので、顔を見合わせてびっくり。これも何かの縁なんじゃないかと、数日一緒にパリ観光を楽しみました。前回ほとんどまともに話さなかったのに、数カ月ぶりの再会に嬉しくなって、会話も盛り上がりました。お互いあれからどこの国へ行っただとか、あの国が良かっただとか、どこの宿がおすすめだとか。一緒に数日間過ごすうちに、それまでほとんど知らなかったようすけさんのことを少しずつ知るようになりました。元ラグビー部で見た目とっても男っぽいのに甘いものが大好きなことや、犬と子供にメロメロなことや、まわりにとっても気が遣えること。今度は忘れ物しないでくださいね〜なんて冗談を言っていたのに、先にパリを離れたわたしは自分の鞄の中にメガネケースが入っていないことに気が付きました。あちゃ…またやってしまった。と思っていたら早速携帯にようすけさんから連絡が入りました。「今度は南米に持っていきますね。」知らないうちにわたしはその宿に、心残りを残してしまっていたみたいです。

     

    ●忘れ物から始まる

    南米でも無事に合流したわたしたちは、同じ宿の旅人からも不思議がられる縁。南米のどこの国、だなんて全然決めていなかったのに、たまたま同じ国の同じ都市に同じ日に滞在していたからです。二人共帰国予定がだいたい同じくらいの時期だったと、東から西へと向かうルートだったため、なんとなくルートが似てくることは自然でしたが、それにしても偶然がこう何度も起こるとドキドキしてしまいます。同じ女子ドミトリーにいたお姉さんに「どうなの?ほんとに実際そういうのって運命かもしれないよ?」なんて言われる始末。それまで全く考えていなかったのに、できるならこの宿を離れてもまたようすけさんに会いたいなあと思ってしまった自分がいました。まさか恋のはじまりが忘れ物のマフラーだとは思いませんでしたが。わたしがペルーを離れる前の日、一緒に宿の屋上に登ってぽつりぽつりと灯る街の光を眺めながら、他愛のない話をずっとしていました。まさか世界一周中にこんなに何度も会うことになるなんてね〜って笑うようすけさんを、また明日から見なくなるのが素直に寂しいと思いました。思わず聞いてしまいました。「また会えますかね?」「海未ちゃんが忘れ物してくれたら。」そうやって笑って言われたので、バックパックごと置いていってしまおうかと思ったくらいです。

     

    ●最後の忘れ物

    ペルーの日本人宿を出たのは、今度はようすけさんが先でした。引き止めたい気持ちを必死でおさえながら、また新しい国へと向かうようすけさんを笑顔で見送りました。ひとりで観光するのもなあ、と思いつつ宿に戻ると、見覚えのあるネックレスが置いてありました。一緒に観光しに行った教会でもらった、十字架のペンダント。あれ?わたし今付けているのに。あっと気がついたときにはもうようすけさんの姿は見えなくなっていました。すぐに走って追いかけたらもしかして、間に合ったのかもしれません。でも、それをしなかったわたしは大切に、そのペンダントを自分の鞄にしまって、ようすけさんの携帯に連絡しました。「ペンダント、忘れてますよ。今度はわたしが届ける番ですね!」「ごめんなさい。でも、これでまた会えますね。」今までさんざん忘れ物を届けてもらったお礼に、次に会うまでに行く国で、何かお土産を買っていこうかな。