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【パッカー海未の恋愛放浪記】韓流タイタニック@韓国

  • 2014年12月16日  空山 海未  



    それは韓国からロシアへ向かう船の上での物語。満天の星空の下を進むフェリーでは、かの有名な恋愛映画のようなシチュエーションが…でも、どれだけロマンティックな雰囲気でもやっぱり役者は重要です。


    ●出会いは船酔いから

    韓国の東海という街から、ロシアのウラジオストクへ向かうフェリーに乗ったときのことでした。出航したフェリーは、やや荒れた日本海をざぶざぶと進んで行きました。もちろん貧乏バックパッカーの海未は一番安いランクの部屋なので、絶え間無く部屋に響くエンジンの振動と、押し寄せる波の揺れですっかり気分が悪くなってしまい、風に当たるためにデッキへ。

    スイートルームは海未の部屋の10倍以上の値段のフェリーなので、一応共有部にはオシャレなBARやレストラン、クラブまでついていました。

    デッキではロシア人と思われる美男美女カップルがとっても良い雰囲気。ちょっと切ない気持ちになりながらも、船酔いが覚めるまでぼんやりとデッキに座り、一人旅の海未には縁がないわ、と思っていたら、クラブから出て来た韓国人の男性に話し掛けられました。

     

    ●悪い人じゃなさそうだけど…

    大学時代に日本語を勉強していたという彼は、覚えている単語を並べてとにかく会話を続けたい様子。片言の日本語と、英語、たまに混ざるロシア語。一人旅でさみしいよりは話し相手ができて嬉しかったので、しばらく旅の話や、自分のこと、家族のことを話しました。

    奢るから一杯飲もうよ!とクラブに海未を連れて行こうとするので、いや余計気分悪くなりそうだからやめておくよ、と断りました。他にも理由はあったのですが…

    「なんで!一杯飲んだら気分良くなるよ!せっかくなんだし!ね!」

    と半ば引きずられるようにしてクラブに入り、出て来たのは生ビール。

    苦笑しつつ乾杯し、しばらくすると本当にいい感じに酔いが回って気分もふわふわしてきました。クラブで流れるちょっと昔くさい気がする音楽も心地よくなり、何曲かリズムに合わせて踊ったり、また飲んだり。それでもお酒には気をつけること、忘れない。海外を女ひとり旅するのなら自分の身はきちんと自分で守らなきゃ。

    彼は私と話す前にも既に飲んでいたのか、どんどん酔っ払ってきてやたらベタベタと脚や肩を触ってくるようになりました。だから、お酒を一緒に飲むのは嫌だって断ったのに。話している限り、性格は悪い人ではなさそうだし、英語もロシア語も日本語も話せるってことはきっと勉強熱心なんだろう。これからロシアに仕事で行くと言っていたし、国際的に飛び回る仕事をしているなんてすごい。それに、人は見た目が全てじゃないとは言うけれど…

    そう、その彼、というかおじさん。かなり体格がいい、というか中年太り。ズボンがきつそう。今にはじけとびそうな、シャツのおなかのボタン。首と顎の境目はどこ?さらに上に目をやると、薄めの髪の毛、ややテカり気味の顔、にちょこんと乗ったメガネ。

    そして極めつけは臭い。お酒の臭いと体臭が混ざって、近づかれるとなんともいえない異臭が漂ってくるのです。お願いだから口を開かないで。

    会話の途中でやたら触ってくるおじさんの手を不自然にならないように避けながら、早くも最初にきっぱりと放っておいてと断らなかった自分を恨み始めました。


    ●ロマンチックなシチュエーションのはずが…

    近づかれることに耐えきれず、誘い出したデッキ。臭いは風で誤魔化されるものの、今度はクラブのように周りに人がいないので、突然積極的になるおじさん。タイタニック、やろーよ!なんていいながらチャンスがあれば触ろうとしてくる。それ以上顔近づけられたら私、本気でこのデッキからあなたを突き落としてしまいそうです。さすがに旅中に殺人事件を起こして強制帰国なんてことにはなりたくないので、日本に彼氏がいるから本当に無理、なんて適当な嘘をついて逃げようとしても、

    「今ボクたちがいるのは日本じゃない、海の上だよ?自由なんだ。」

    なんかの映画にでも出てきそうな台詞!でも…

    き、気持ち悪い…

    近づいてくるおじさんをかわしつつ上を見上げると、今にも降ってきそうな満天の星空が広がっていました。ああ、これがもしイケメン韓流スター相手だったら間違いなく私、このシチュエーションにドキドキしちゃってました…

    残念ながら目の前には、自分の父親より歳上のおじさん。うーむ…いくら韓流でもこれは違う。

    すっかり酔いも覚めて、船酔いもついでに覚めて、迫ってくるおじさんの顔を必死でよけ、全力でそのぽにょぽにょのお腹を向こうへ押し戻して、あわよくばそのまま酔っ払って海に落ちて頭を冷やせと願いつつ、わたしはダッシュで自分の部屋に逃げ込んだのでした。